大注目のキヌアについて知るべき事柄



日本でもブームとなったキヌア。皆さんは食べたことがありますか?
私が滞在しているバンクーバーでは、キヌアの入ったサラダやスープ、白米の代わりにキヌアを使用した寿司を取り扱っている日本食レストランもあります。今回は世界中で注目されているキヌアについてインカ文化とのつながりや問題点を含めてまとめます。




キヌア

以前の投稿でも記しましたが、ペルーの国章に描かれています。原産国はペルー、ボリビアで5000年以上前から栽培されていたという説もあります。

植物としてのキヌア

生態

●ヒユ科アカザ亜科アカザ属の植物でほうれん草と同科
●日本では雑穀に分類される
●キヌアは環境適応性が高く、年間雨量が少ない温帯地域(ステップ気候)での生育が可能で多くの作物が育たない土地での栽培が可能
●種まきから収穫までの期間はおよそ6か月

種類

栽培用と野生に発生するものを合わせて3000種類以上といわれています。品種により、赤、黄、紫、白色などがあります。適応しやすい気候区分として5つに分類されます。


キヌアの栄養

キヌアすべての必須アミノ酸、食物繊維、脂質、亜鉛や鉄などのミネラル、ビタミン、カルシウムを含みます。脂質量は乾燥品で8%程度とあまり高くなく、その脂質のほとんどがリノレン酸、オレイン酸といった体に必要な不飽和脂肪酸です
また、グルテンを含まないため、小麦アレルギーを持つ人でも安心して摂取できます。
食べ合わせとしてカルシウムの吸収率を上げるためにはビタミンDとともに鉄分の吸収率を上げるためにはビタミンCと摂取する効果的です。



インカ文化とのかかわり

インカ文化ではキヌアはトウモロコシと同様に貴重な作物であり、チソヤ・ママ」(「穀物の母」)と称される神聖な作物でした。 スペインのインカ帝国征服後、スペイン人はインカ文化を払拭しインカの人々を同化させる為に、キヌアの栽培を禁止しました。これによって、アンデス原産の他の作物であるジャガイモやトマト、トウモロコシなどは世界中に広まったのに対し、キヌアの栽培は限られた地域にとどまりました。もし、スペイン人による規制がなかったら、キヌアの普及は他の作物同様にもっと早い段階からおこなわれていたかもしれません。


キヌアが世界を救う!?

1990年代、NASA(アメリカ航空宇宙局)はキヌアの高い環境適応性や小麦アレルギーの原因物質となるグルテンを含まない点を踏まえ、理想的な宇宙食の素材の1評価し研究を続けています。
また、国連はキヌアの栽培を世界に広めることにより食料安全保障と飢餓撲滅を意図し、2013年をキヌア年としました。
日本でも2016年に、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)や京都大学らの共同研究において「キヌアのゲノム配列の解読に世界で初めて成功」と題し発表しています。
そして今年2017年2月にキヌアの完全なる遺伝子情報が解明された専門家は発表しています。
やせた土地でも栽培が可能であることから、飢餓に苦しむ発展途上国などでも重要な食料として期待されています。遺伝子情報が解明されたことにより、実用的な計画が進められ世界的に栽培が広められるのも遠くはないかもしれません。



ブームのその陰で。。。

日本を含め世界的に注目されたキヌア。需要が高まり市場価格が高騰し、現地の農家は現金収入が得られています。その一方で、ペルー国内でも価格が高騰し現地の人が手に入らない事態が起きています。これにより、古くから築かれた食文化が崩壊しようとしています。現地の人々の食文化を守りつつ、キヌアの取引ができるようなシステム作りが急がれます。


注意点

キヌアは植物毒であるサポニンという物質に覆われています。商品になってお店に陳列されているものは、すでに機械で取り除かれて処理されていますが、調理する時にはよく水洗いする必要があります。サポニンは水に溶け泡立つ特徴があるので、泡立ちがないかどうかも目安になります。過剰摂取により赤血球を破壊する溶血作用があり、また、苦みやエグミの原因となります。サポニンは大豆や小豆、ブドウの皮などにも含まれています。少量摂取することは問題ないので神経質になる必要はありません。漢方薬などの生薬ではサポニンを含むものが多くあります。
健康的な食品に共通することですが、栄養素が多く含まれるからといって特定の食品のみ食べるのは考えものです。バランスのよい食事が健康づくりの第一歩であることを忘れずにいたいものです。


まとめ

●必須アミノ酸や食物繊維、脂質、ミネラル、カルシウムなど体に必要な栄養素を含み、グルテンを含まない
●歴史ある雑穀キヌアは食料問題の未来の救世主となりうる
●市場価格の高騰により現地の食文化を脅かす問題も抱えている


5000年以上も前から栽培され人類の生命を支え、また未来においても重要な食料となるかもしれないキヌア。まさにインカ時代の「穀物の母」の名にふさわしく、母親の子への普遍の愛のように大地の恵みを人類にもたらしてくれる母といえるのではないでしょうか。


参考:Quinua 2013 international year(英文)
AFPウェブサイト(日本語)
「キヌアのゲノム配列の解読に世界で初めて成功」
国際農林水産業研究センター(JIRCAS)、京都大学らの共同研究(日本語)






コメント

このブログの人気の投稿

コカ茶の効能

アメリカとカナダ入国時必要なもの